とあるバー。
店に居るのは初老のマスターとカウンターに数時間前この店で出会った男と女がふたり。
女「えーそんなんだ。あなたよく知ってるわねそんなこと。ところで何してる人?」
男「ん?俺?……えー………探偵」
女「探偵!探偵って浮気調査とか経歴調べたりとかしてるの?」
男「そういうのもするけど、何かと事件に巻き込まれたり…」
女「えっ事件?何々、聞かせてよ!」
男「…うん、そうだなぁ。じゃぁ中国人がヤクザの親分を狙った話し。」
女「中国マフィア?抗争?すごいじゃない。」
男「マフィアじゃなくてヤ・ク・ザ。ひとりの中国人が親分を狙撃しようとした。」
女「狙撃?スナイパーって奴よね。それでそれで!」
男「それで、それでって…あとスナイパーって映画の見過ぎ。」
女「わかったって。っでその中国人のスナイパーはどうなったの?」
男「スナイパーって…。その中国人はスナイパーじゃなくてただ同胞のためにヤクザを狙っただけ。」
女「狙ってどうなったの。失敗して逆にやられたとか…」
男「そう。悲しい事件だったよ。うん。誰も喜ばない悲しい事件。」
女「ふーん、そうなんだぁ。他にはないの?」
男「双子の人捜し。」
女「双子?双子を捜すの?」
男「そう聞くと思った。そうじゃなくて双子の片方が依頼人でもう一人を捜してくれって…」
女「へぇ、その双子のひとりは家出か何かしたの?蒸発?」
男「家出でも蒸発でもない。父親が二人を幼いときに無理矢理引き離した。」
女「酷い親ねぇ。それで見つかったの?」
男「それが捜している途中に依頼人が誘拐されて…」
女「人捜しが誘拐事件?誘拐された人も捜すの?」
男「そう。人捜しが誘拐犯探しになって結局は狂言のような狂言でないような…。まぁ複雑だね。」
女「ふーん、何かややこしいねぇ。もっと他にはないの?」
男「ビリヤードって知ってる?」
女「知ってるけどやったことはないわ」
男「俺も初めてやったけど難しいよ。その棒、キューっていうんだけどキューをまっすぐ出すために1.5リットルの空のペットボトルにキューを1日1000回通す練習をするんだぜ」
女「へぇ。それも探偵の仕事なの?それとも事件?あっ!わかったビリヤード殺人!」
男「そうキューで刺してって…違う。ビリヤード協会の関係者が次々と毒物が混入された飲み物を飲んで…」
女「死んだの?」
男「すぐ殺す。誰も殺されなかった。ただの毒物を混入した犯人探し。」
女「ふーん。それはタダの人捜しね。」
男「タダの人捜しって…まぁそうだけど。」
女「それでその犯人はどうなったの?」
男「有名なハスラー、ビリヤードの選手をこういうんだけどそのハスラーの奥さんが犯人だった。」
女「やっぱり旦那を勝たせようと相手に毒を飲ませたわけ?」
男「単刀直入に言うなぁ。まぁ表向きはそうだけどもっと奥深い理由があったんだよ。」
女「ふーんそうなんだ。他には他には?」
男「他かぁ…じゃぁプロ野球は?知ってる?」
女「あんまり知らなぁーい。知っているのは阪神タイガースぐらい。」
男「それで充分。その阪神の試合が爆破されるっていう話し」
女「えっ!いつされたの?私知らないけど。いつ?」
男「いやいや、爆破されなかった。爆破予告があって…」
女「じゃぁその爆破予告はイタズラだったの?」
男「爆弾は本物だった。」
女「ひゃぁー。」
男「ひゃーって。その爆弾には暗号があってそれを解読して爆破を止めたってわけ。」
女「へぇ賢いんだぁ」
男「まぁね。探偵やってるからね。そういえばその試合で星野監督に会ったよ。星野監督知ってる?」
女「星野監督ぐらいは知ってるわよ。でも辞めたのよね。いま誰が監督しているのか知らないけど…」
男「お・か・だ。」
女「おかだ?全然知らない。ハンサム?」
男「話題を変えよう。そうそう別の捜しモノをしていて偶然昔捜していた人に出会ったこともあったなぁ」
女「へぇそういう偶然もあるんだ。でも見つかってよかったじゃない。」
男「そう良かったけど。見つかったことでわかる真実っていうのがあって…」
女「なんかいろんな話しを聞いてると人を捜すって捜すときも悲しいけど結局見つかった後も悲しいのね。」
男「なんか急に語り部になってるね。」
女「いいじゃない。真剣に聞いてるからそう思うのよ。ところでその時捜していた別の捜しモノって何だったの?」
男「…九官鳥」
女「九官鳥!あははは!やっぱ探偵だけあって捜しもの多いわよね。でも九官鳥って…」
男「でも他にも捜すモノあるぞ。宝探しとか…」
女「宝探し?それって探偵がすることなの?」
男「いやいや宝探しをしている人に巻き込まれて…」
女「巻き込まれて宝をゲットした。」
男「いや結局宝なんて無かった。ていうか色々と複雑でさ。人間関係って。」
女「何でもかんでも複雑なのね。人間関係ってそんなものこもね。ってこんなこと言うとまた"語り部"って言われるわね。」
男「うん、君は"語り部"」
女「うんもう。語り部で良いけどほかにもっと面白い話しって無い?」
男「じゃぁこれはどう。日系ペルー人のタクシードライバーがヤクザの親分を…」
とそのときバーのドアが開き客が入ってきた。
客「マスター久しぶり。いきなり電話してきてどうしたの?依頼?」
マスター「やぁピンちゃん久しぶり…」
【No.3・了】