キリコはショウの携帯にメッセージを入れた メッセージはたった一行 「わたしも、いつか邪魔になるの?」
キリコのルージュがいつから赤になったのか・・・ ショウは気付くまい。 キリコがいつから、ショウを前にしても腋の下に熱い汗をかかなくなったかも もともと、ショウはキリコが熱いおんなの体を持て余していた時期があったことすら気が付いていないだろう。 だから、キリコの変化に最初から最後まで気付くまい。
携帯をもてあそびながら、キリコは薄く笑った。 「フフフ、アホな男」
そこは喫茶店。 キリコが指定して相手を待っていた。 キリコ「私もいつか邪魔に・・・か? 私も演技派になったもんね」 キリコは分厚い書類袋と中に入れたCD−R、ICrecorder、DVDなどを一通り点検した。 店内の鏡にそっと目をやった。 これから闘いが始まる・・・私の戦闘服。 薄いパープルはもう捨てた。 赤いルージュ、赤い爪。 黒を基調に体の線を意識させるスーツ。 そのうちきっと、赤いスーツの似合う女としてショウの前に立ってみせる。 チャンスはすぐそこにある。 傍らに置かれた手帳に戯れにペンを走らせた。 「邪魔になるのは、アンタよ、ショウ」
喫茶店の入り口から背の高い男が入ってきた。 店内を眺め渡す仕草にキリコは手を挙げた。 「ここよ」 「やあ、お待たせお待たせ。ここで話す?」 「ここじゃちょっと。ここの上に部屋をとってあるから」 「ふふふ・・・やるね」 男がそっと肩に手を回した。
2人はその喫茶店を出て行った。 キリコは思う。 何もかも、あの夜の出来事から始まった。 あれは偶然? 彼女に出会ったのも偶然? しかし、それは同時にチャンスだった。
運命なんてこんなものかもしれない。
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